お客様のお役に立つ JAIFA学習帖

  • サイト内検索:

生保税務 個人編

相続の特別受益と死亡保険金

Q:契約者・被保険者は父、死亡保険金受取人は子どもであるわたしという契約形態で生命保険に加入しています。父が死亡した場合は、この死亡保険金は遺産分割協議ではいわゆる「特別受益」になるのでしょうか。相続人は3人(配偶者・子ども2人)です。

A:はっきりした規定はありません。さまざまな説がありますが、一般に死亡保険金も含めて遺産分割することが多いようです。

民法上は、相続人が被相続人から遺贈を受けていたり、結婚の持参金、学費・留学などの費用、開業資金または生活費などの贈与を受けた者がいる場合、「相続分の前渡し」として相続発生時にはその者の相続分を減らし、被相続人から生前に金品をもらった人ともらっていない人とのバランスを図るという考え方があります。

このように生前に贈与を受けていたものや死亡時に遺贈を受けていたものを「特別受益」と呼び、その受領者を「特別受益者」と呼びます。

相続発生時に、相続人全員がこの民法上の考え方に納得して「特別受益」を認めて遺産分割を行う場合、過去に受けた特別受益分を現在価値に換算して相続財産に加算して仮定の相続財産額を算出することになります(2019年7月1日施行の改正民法により、結婚20年以上の配偶者に対する自宅の生前贈与は、特別受益分から除外可能)。この相続財産額を分割した相続分から特別受益分を引いた価額が、それぞれの相続分とされます。

しかし、この考え方は民法上の考え方であり、相続税法の「相続開始前一定期間以内の贈与財産の加算」とは別の概念です。また、特別受益をどの程度さかのぼって考慮するかは相続人間の合議により決定されます(2019年7月1日施行の改正民法により、遺留分については相続開始前の10年間に限り考慮する)。

では、死亡保険金はどのように考えられるのでしょうか。これについては学説や判例でさまざまな考え方があります。

  1. 死亡保険金は死亡保険金受取人の固有の財産と考え、本来の相続財産ではなく、特別受益の考え方には該当しないとする説
  2. 被相続人が保険料を負担し、その結果、死亡保険金を受け取ることができるのであるから当然に相続人の相続財産の前渡しという考え方があり、死亡保険金は特別受益に該当するという説

このようにまったく正反対の2つの説があります。しかし、どちらも実際の相続が発生して、遺産分割協議が紛糾した場合に「特別受益分」が問題になりますので、一般に死亡保険金を相続財産に含めて遺産分割を考えることが多いようです。

2023.04.01 (栗原)