お客様のお役に立つ JAIFA学習帖

  • サイト内検索:

社会保障制度の基礎知識

高額療養費②高齢者 保険外併用療養費

●高齢者の医療給付

  70歳以上の高齢者は、負担割合が所得等に応じて分かれており、高額療養費も下位所得層に手厚くなっています。

●高齢者の療養の給付

【70歳以上の療養の給付】

区 分 対 象 給付・負担割合
現役並み所得者
  • 70歳以上で課税所得145万円以上
  • 70歳以上の本人・被扶養者世帯の年収が約520万円以上、単身世帯で約383万円以上
7割(3割負担)
70歳~74歳の一般 70歳以上74歳までの上記以外 8割(2割負担)
75歳以上の一般 75歳以上で上記以外 8割~9割(原則1割負担、ただし令和4年10月より一定以上の所得のある人は2割負担)

●高齢者の高額療養費

  70歳未満とほぼ同等ですが、低所得者は自己負担限度額が低く抑えられています。

【70歳以上の自己負担限度額】

区 分 対 象 自己負担限度額 多数該当
外来(個人) (入院と世帯合算)
現役並み
所得者
課税所得690万円以上 252,600円+(医療費総額-842,000円)×1% 140,100円
課税所得380万円以上 167,400円+(医療費総額-558,000円)×1% 93,000円
課税所得145万円以上 80,100円+(医療費総額-267,000円)×1% 44,400円
一  般 上記・下記以外の世帯 18,000円
(年間上限14.4万円)
57,600円
低所得者Ⅰ 市町村民税非課税の世帯 8,000円 24,600円
低所得者Ⅱ 市町村民税非課税の世帯
かつ一定所得以下の世帯
8,000円 15,000円

  高額療養を算出する単位は、70歳以上についても70歳未満と同様に、レセプト単位です。つまり1カ月ごと、1病院・診療科目ごと、入院・通院ごとに医療費1件として計算します。

  なお、合算高額療養費の算出では、70歳以上の自己負担額には合算する際の基準額(いわゆる足切り額)がなく、負担した全額を算入できます。
  世帯合算で高齢者と70歳未満の家族がいる場合、自己負担限度額の算出方法は次のようになります。

(1)70歳以上の人の外来分を個人単位で計算

(2)70歳以上の人の外来自己負担分に入院の自己負担分を加え、自己負担限度額を超えた分が高齢者世帯の人の高額療養費

(3)上記(2)と70歳未満の人の21,000円以上の自己負担分を合算し、70歳未満の自己負担限度額(前回解説)を超えた額が高額療養費(1%を算出する際は、世帯全体の医療費合計を医療費総額とする)

*課税所得145万円未満等。
なお、後期高齢医療制度適用者と医療保険(被保険者・被扶養者)との世帯合算は制度が異なるため、合算はできません。

●高額介護合算療養費

  医療保険と介護保険とを合わせた自己負担額を抑制するための制度が、2008(平成20)年4月に創設されています。上限額は次のとおりです。

70歳以上 70歳未満が
いる世帯
課税所得690万円以上 212万円 212万円
課税所得380万円以上 141万円 141万円
課税所得145万円以上 67万円 67万円
一般 56万円 60万円
低所得者Ⅱ 31万円 34万円
低所得者Ⅰ 19万円

●差額を自己負担できる診療が「保険外併用療養費」

  医療保険では法令に定められた保険診療とそれ以外の保険診療を同時に受診できないのが原則です。その例外として限定的に「評価療養」、「選定療養」、「患者申出療養」という3区分で以下のようなものが認められます。患者に十分な説明をしたうえで、本人が同意すれば、その部分について全額自己負担で治療を受けられます。

●保険外併用療養の一例

(1)先進医療
厚生労働大臣の承認を受けた大学病院などで、新薬や新しい治療法による治療を受けた場合、通常の診療、検査、入院などの医療費は保険対象になります。重粒子線治療や陽子線治療などが認められています。

(2)医薬品や医療機器の治験にかかる診療
有効性や安全性等は確認されていても、社会保険では未だ適用となっていない医薬品や医療機器について、先行して使用するものです。

(3)特別室の提供
いわゆる差額ベッドで、個人の希望により個室などに入院する場合です。ただし集中治療室や治療上必要がある場合には保険対象です。

(4)歯科材料
保険対象外の金合金やセラミックなど、特別な歯科材料です。

(5)その他
紹介制の大病院で紹介状なしに受診したときや、予約診療・診療時間外の診療、虫歯の指導管理などがあります。

2023.04.01 (保坂)