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No.4356 コロナ禍で入院時の家族付き添いの実態は?

● コロナ禍を理由に認めていないが5割超

 新型コロナウイルス感染症の拡大下において、医療機関における入院患者への家族等の付き添い(※)はどうなっているか。その実態把握のため、厚労省の中央社会保険医療協議会が、2021年10月から11月にかけて全国300の医療機関を対象に調査を行った。複数回答なので「ケースバイケース」も含まれているが、「付き添い状況」は以下のようになっている。

「新型コロナウイルスの感染症(以下、新型コロナ)拡大以前より、患者家族等の付き添いは一切認めていない」……3.4%
「新型コロナ対策のため、現在は患者家族等の付き添いは認めていない」……51.1%
「入院患者・家族等が希望した場合、医師の許可を得て付き添いを認めることがある」……59.1%
「入院患者の病状により、病院側から家族等に付き添いを依頼することがある」……33.0%
「その他」……2.3%

 この結果からは、確かに「入院患者への付き添い」に関してコロナ禍の影響の大きさが浮かんでくる。ただ、「医師の許可を得て付き添いを認めることがある」「病院等側から家族等に付き添いを依頼する」という割合も多い点では、「付き添いが可能か否かの線引きがどうなっているのか」について、ピンとこない人もいるだろう。そこで、入院患者への家族等の付き添いについて、そもそもの法令上の規定や「付き添いが要されるケース」などにふれておこう。

※… この場合の「付き添い」とは、「日中の面会」等にとどまらず、「夜間に患者と一緒に病院に泊まり込む」などのケースを指す。

● そもそもの「付き添い」の法令規定は?

 まず法令上の規定だが、今から半世紀以上前の1957年厚生省令(保険医療機関および保険医療養担当規則)では、「保険医療機関は、その入院患者に対して、患者の負担により、当該保険医療機関の従業者以外の者による看護を受けさせてはならない」とされている。これは、患者負担による付き添い看護を明確に否定したものだ。ただし、「家族による付き添い」については、診療報酬上の施設基準において「患者の病状により、あるいは治療に対する理解が困難な小児患者や知的障害を有する患者等(認知症の高齢者なども含む)の場合(一部意訳あり)」において「医師の許可」を得たうえで「差し支えない」としている。

 実際、家族による付き添いのケースでは、「7歳未満」が56.4%と半数以上、一方認知症リスク等の高い「70歳代以上」の患者ケースも20.5%におよんでいる。また、家族が主体的に「付き添いをしたい」と考えるケース(複数回答)として、「容態の急変が考えられる場合」(95.0%)や「患者の精神的不安が強い場合」(80.0%)、「患者が乳幼児または小学生以下の場合」(77.5%)が目立つ。一方、「患者が高齢である」や「認知症がある」というケースもそれぞれ2割見られる。

● コロナ禍での付き添い困難の影響とは

 こうして見ると、コロナ禍によって「家族の付き添い」が困難な状況は、特に小児や高齢の患者がいる家族にとって不安材料となっている様子が浮かぶ。ただし、注意したいのは「患者の付き添いを始めたきっかけ」について、「病院側からの依頼」(53.8%)が「家族自身の要望」(38.5%)を上回っていることだ。また、家族側としては、付き添いを行なった場合に、「十分な睡眠がとれない」(52.9%)、「他の家族の世話ができない」(47.1%)などの心配事や困り事も少なくない。

 そうなると、コロナ禍での「家族付き添いが困難」な状況により、戸惑いが強いのはむしろ医療機関側なのではないかという憶測も浮かぶ。結局は、付き添いの有無にかかわらず、家族や患者本人の不安をどのように解消するかという、医療機関側のコミュニケーションのあり方が問われているのかもしれない。

参考: 厚生労働省「入院患者の家族等による付添いに関する実態調査概要について」

2022.09.12

田中 元(たなか・はじめ)

 介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
 主な著書に、『2018年度 改正介護保険のポイントがひと目でわかる本』『《全図解》ケアマネ&介護リーダーのための「多職種連携」がうまくいくルールとマナー』(ぱる出版)など多数。

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