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No.4355 コロナ感染後に職場復帰する際、気をつけたいこと

● 後遺症が重いと職場復帰が困難に…

 新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の感染者は、国内で延べ1,800万人を超えています(8月25日時点、NHKまとめ)。皆さんの職場でも感染経験者がいらっしゃるのではないでしょうか。

 コロナに感染した労働者が療養期間を終えて職場復帰する際、どのような点に留意すればよいか、厚生労働省ホームページの「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」で、下記のようなアドバイスをしています。

新型コロナウイルス感染症の回復経緯や心身の負担には個人差があることから、療養終了後に職場復帰する場合の対応に当たっては、業務によって症状を悪化させること等がないよう、主治医等の意見を踏まえた本人の申出に基づき、産業医や産業保健スタッフとも連携し、勤務時間の短縮やテレワークの活用など、労働者の負担軽減に配慮した無理のないものとすることが望ましいです。
長引く症状(罹患後症状(いわゆる後遺症))については、いまだ明らかになっていないことも多いですが、これまでの国内外の研究によると、新型コロナウイルス感染症にかかった後、多くの人は良くなりますが、治療や療養が終わっても一部の症状が長引く人がいることが分かってきております。

※ 下線は編集部による。

 職場復帰後は無理がないよう、体調等に合わせて少しずつならしていくことが大事ということですね。それよりも気になるのが、「治療や療養が終わっても一部の症状が長引く」、いわゆる後遺症が残る人がいることです。コロナ後遺症にはどのようなものがあり、職場ではどのように対処すればよいのか、厚生労働省の総括研究報告「課題名:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期合併症の実態把握と病態生理解明に向けた基盤研究」によると、コロナ入院患者1,200例のアンケートからおもに以下のような傾向が見られました。

  • 性別では、男性のほうが圧倒的に多い(男性は女性の1.75倍)
  • 重症度では、中等症、軽傷(無症状含む)が多かった
  • 延々と続く症状が1つでもあると、不安や抑うつ、コロナに対する恐怖、睡眠障害を自覚する傾向は強まった
  • 代表的な24症状(倦怠感、呼吸困難、筋力低下、集中力低下、脱毛、睡眠障害、嗅覚障害、咳、頭痛、味覚障害、記憶障害、関節痛、筋肉痛、痰、手足のしびれ、眼科症状、皮疹、耳鳴り、咽頭痛、発熱、下痢、感覚過敏、腹痛、意識障害)の多くは時間の経過とともに低下する傾向が認められる
  • 1年後に5%以上残っていた症状は、疲労感・倦怠感(13%)、呼吸困難(9%)、筋力低下、集中力低下(8%)、睡眠障害、記憶障害(7%)、関節痛、筋肉痛(6%)、咳、痰、脱毛、頭痛、味覚障害、嗅覚障害(5%)
  • 中年者(41~64歳)は、他の世代と比べて後遺症が多い傾向(1年後の時点で咳、痰、関節痛、筋肉痛、筋力低下)が認められ、世代間差異としては、高齢者に眼科症状が多く、若年者に感覚過敏、味覚障害、嗅覚障害、脱毛、頭痛が多く認められた
  • 3カ月後の時点では、女性のほうが咳、倦怠感、脱毛、頭痛、集中力低下、睡眠障害、味覚障害、嗅覚障害など様々な症状が高頻度で認められ、1年後の時点では、男性のほうが咳、痰、関節痛、筋肉痛、皮疹、手足のしびれが高頻度となり、全体の頻度としては性差が減少した

 疲労感・倦怠感、集中力低下、記憶障害などは、職場で周囲から、「仕事に集中していない」「さぼっている」と受け取られがちですが、コロナ後遺症の影響という理解が必要です。また、復帰直後から1年ほどかかって徐々に改善されるケースもあるので、長い目で見てあげることも大切です。近年では地域のクリニックや小規模の病院でもコロナ後遺症外来が増えてきているので、必要に応じて受診を検討することもお勧めします。

参照:
 厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」
 厚生労働省「第86回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料(2022/6/1)」

2022.09.12

半田 美波(はんだ・みなみ)

社会保険労務士
みなみ社会保険労務士事務所 代表、株式会社サンメディックス 代表取締役
診療所で医療事務職として勤務した後、医療法人事務長、分院の設立業務担当を経て、2003年に医療機関のサポート会社・(株)サンメディックス設立。2004年にみなみ社会保険労務士事務所を設立。医療機関に詳しい社労士として知られる。